「AIが人類を滅ぼす確率は70%」――そんな衝撃的な発言で海外のAI界隈をざわつかせている人物がいます。
名前はダニエル・ココタジロ(Daniel Kokotajlo)。
元OpenAIの研究者で、今は「AI Futures Project」という非営利団体を率いています。
「胡散臭い陰謀論者では?」と思うかもしれませんが、実は彼、2021年に書いた予測ブログがかなりの精度で的中したことで、シリコンバレーやAI研究者の間では「当たる予言者」として一目置かれている人物です。
アメリカ副大統領のJD・ヴァンス氏が彼のレポートを読んでいたことでも話題になりました。
この記事では、日本ではまだあまり紹介されていない彼の経歴・思想・そして直近(2026年7月)の最新インタビューでの発言まで、できるだけわかりやすくまとめます。
この記事の要約
- 01 ダニエル・ココタジロは元OpenAI研究者で、現在は「AI Futures Project」代表。哲学専攻という異色の経歴を持つ。
- 02 2024年、非誹謗条項へのサインを拒否し、約200万ドル(当時約3億円)相当の株式を放棄する覚悟でOpenAIを退社した。
- 03 2021年のブログ予測が高精度で的中したことで、AI業界内で「当たる予測をする人物」として評価されている。
- 04 2025年発表の「AI2027」は、超知能誕生までのシナリオを描いた予測レポート。タイムラインはその後も状況に応じて修正され続けている(直近は2029年前後に再修正)。
- 05 2026年7月の最新インタビューでは、Anthropic躍進の分析や「AI2040 Plan A」構想など、日本未紹介の発言も多数。
ダニエル・ココタジロの経歴──哲学専攻からOpenAI幹部候補へ
もともとは工学系でもコンピューター科学専攻でもありません。
ノートルダム大学で哲学を専攻し、2014年に卒業した文系出身者です。
その後、哲学の博士課程に進みますが、途中で「AI Impacts」というAIの未来を研究する団体、続いて「Center on Long-Term Risk」という長期的リスクを研究する団体で働き、2022年にOpenAIへ入社しました。
OpenAIでの肩書きは「ガバナンス部門の研究者」。
彼が担当していたのは、AIの危険な能力(サイバー攻撃能力や説得能力など)を測定する評価の仕事や、「この先AIがどう進化していくか」を社内向けに予測するシナリオ作成でした。
実はAI 2027の原型となるようなレポートを、OpenAI在籍中にすでに社内限定で作っていたそうです。
2024年、約3億円を捨ててOpenAIを退社
ココタジロ氏の名前が世界的に知られるきっかけになったのが、2024年の退社劇です。
OpenAIを辞める際、退職書類に「今後OpenAIを批判しない」という誓約書(非誹謗条項)へのサインが求められました。
サインを拒否すると、在職中に得ていた約200万ドル(当時のレートで約3億円)相当の株式(エクイティ)を放棄することになる契約でした。
これは当時の彼と妻にとって、資産の8割に相当する金額だったといいます。
夫婦で1〜2ヶ月悩み、弁護士にも相談した末、彼はサインを拒否しました。
「人類全体の利益のための非営利団体のはずなのに、この条項はおかしいと思った」というのが彼の弁です。
この話がネットで炎上に近い形で拡散し、OpenAI社内でも社員がSlackで経営陣に説明を求める騒ぎになりました。
結果的にOpenAI側は方針を撤回し、彼は株式を失わずに済んでいます。
サム・アルトマンCEOは「この条項の存在を知らなかった」とXで釈明しましたが、ココタジロ氏本人は「彼は知っていたと思う。仮に知らなかったとしても、彼の顧問弁護士のような側近は把握していたはずだ」と、やんわりと不信感をにじませています。
「予言者」としての実績──2021年のブログが的中しまくった話
ココタジロ氏が一躍有名になった理由は、単なる「元OpenAI社員」という肩書きだけではありません。
2021年、彼は「What 2026 Looks Like(2026年はこうなる)」というブログ記事を書きました。
これはAIがどう進化していくかを年ごとに予測した文章なのですが、ニューヨーク・タイムズの記者ケビン・ルース氏をして「いくつもの予測が驚くほど的中している」と言わしめるほどの精度だったのです。
この実績があったからこそ、2025年4月に彼が発表した本格的な未来予測レポート「AI 2027」は、公開1週間で彼らの事前予想を大きく上回るアクセスを集める話題作になりました。
「AI 2027」の中身をざっくり解説
「AI 2027」は、2025年から2027年にかけてAIがどう進化していくかを、月単位で細かく描いたシナリオです。
専門用語は避けて、大まかな流れだけ紹介します。
- ステップ1:コーディングの自動化――
AI企業がまず狙うのは、AIにプログラミングをやらせて開発スピード自体を上げること - ステップ2:研究そのものの自動化――
アイデア出しから実験、分析まで、AI研究のプロセス全体をAIにやらせる - ステップ3:知能爆発――
AIがAIを改良するループが回り始め、進化速度が一気に加速する - ステップ4:超知能の誕生――
あらゆる分野で人間の最も優秀な専門家を上回るAIが誕生する
レポートには2つの分岐エンディングが用意されています。
一つは「AIが人間の言うことを聞かなくなり、人間はコントロールを失う」という破滅的な結末。
もう一つは「AIの制御方法(アライメント)の研究がうまくいき、豊かなユートピアが訪れる」という結末です。
ただし後者も、実際に恩恵を受けるのは「AIを管理する一握りの人間(大統領や一部のCEOなど)」に限られる、という皮肉な設定になっています。
予測タイムラインは何度も修正されている──「当てずっぽう」ではない証拠
ここが日本であまり報じられていないポイントですが、ココタジロ氏は「2027年に人類滅亡」と固定的に主張しているわけではありません。
むしろ状況に応じてこまめにタイムラインを修正し続けています。
- 2025年4月(レポート公開時点):
本人の中央値予測はすでに「2028年」(レポート本文の2027年より慎重) - 2025年後半〜2026年1月:
進捗が想定より遅く、「2030年代前半」まで後ろ倒し - 2026年7月(直近):
OpenAIやAnthropicの社員と話す中で「むしろ2027〜28年で合っている」と言われることが増え、中央値を「2029年(早ければ2028年)」に再修正
つまり「延期したと思ったら、また前倒しの空気が出てきている」というのが、2026年7月時点での最新状況です。この“往復”は日本語メディアではまだほぼ紹介されていません。
「人類滅亡70%」発言の本当の意味
ネットで独り歩きしがちな「70%発言」ですが、本人はやや正確に補足しています。
彼が言っているのは「厳密には人類滅亡そのものが70%ではなく、AIによる権力の掌握など、何か非常に大きな破滅的事態が起きる確率が70%」という内容で、そのすべてが直接「絶滅」につながるわけではない、としています。
細かいニュアンスですが、センセーショナルな見出しだけが独り歩きしやすい部分なので、押さえておきたいポイントです。
未邦訳の最新発言(2026年7月インタビューより)
2026年7月13日に公開された海外の人気ポッドキャスト「Diary Of A CEO」でのロングインタビューには、日本ではまだ紹介されていない発言が多く含まれています。ここでいくつか紹介します。
なぜAnthropicが首位に立ったのか
この1年でOpenAIを抜いてAnthropicが業界トップに立ったことについて、
「計算資源でも資金力でも劣っているのに首位に立った以上、説明できる要因は人材の密度と戦略しかない」
と分析しています。
元同僚・イリヤ・サツケバー氏の印象的な一言
ChatGPT公開直後、当時OpenAIのチーフサイエンティストだったイリヤ・サツケバー氏が全社会議で放った言葉として、「これからの1年、君たちは毎回のパーティーで一番の人気者になるだろう。それに浮かれず、使命に集中しろ。AGIを作るんだ」という趣旨の発言を紹介しています。急成長する会社の空気感が伝わるエピソードです。
父親としての本音
これまであまり語られてこなかった家族の話にも触れています。2人の子供がいて、長女は6歳。
「この子たちが働く年齢になる頃には、もう全てが決着していると思う。だからおそらく彼らは一度も働くことはないだろう」と語っており、自身の予測が抽象的な議論ではなく、家庭内でも現実的なものとして受け止められていることがうかがえます。
「AI 2040 Plan A」という新提言
AI 2027が「このまま行けばこうなる」という“予測”だったのに対し、彼らが新たに発表したのが「AI 2040 Plan A」という“提言”です。
超知能の誕生をあえて2040年まで遅らせ、安全に開発を進めるための具体策を描いています。
目玉となるのが「市民配当(Citizen’s Dividend)」という構想です。
AIやロボットで稼ぐ企業から使用許可料を徴収し、その収益を国民に配当として分配する仕組みで、当初は年間約2万5000ドル(1人あたり)からスタートし、最終的には年間約1000万ドル(1人あたり、インフレ調整後)にまで拡大すると試算されています。
荒唐無稽に聞こえますが、「もしAIが本当に全ての仕事を代替するなら、これくらいの再分配をしないと社会が崩壊する」という前提から逆算した数字です。
また、2029年の米大統領選挙では「AIが最大の争点になる」とも予測しています。
ダニエル・ココタジロに関するよくある質問
Q. ダニエル・ココタジロは何者ですか?
元OpenAIのガバナンス部門研究者で、AIの危険な能力の評価や将来予測を担当していた人物です。2024年に退社後、非営利団体「AI Futures Project」を設立し、AIの未来予測レポート「AI2027」の共著者として知られています。
Q. 「AIが人類を滅ぼす確率70%」は本当の発言ですか?
本人が公言している数字ではありますが、正確には「人類滅亡そのものが70%」ではなく「AIによる権力掌握など、何らかの破滅的事態が起きる確率が70%」という主旨です。そのすべてが直接的な絶滅を意味するわけではないと、本人も補足しています。
Q. 「AI2027」の予測は当たっているのですか?
レポート公開後、著者自身の予測タイムラインは状況に応じて何度も修正されています。2026年前半には後ろ倒し(2030年代へ)されましたが、直近の2026年7月時点では再び2028〜29年寄りに修正されるなど、固定的な予言ではなく継続的にアップデートされている点が特徴です。
Q. なぜOpenAIを退社したのですか?
退職時に「会社を批判しない」という非誹謗条項へのサインを求められ、拒否すれば約200万ドル相当の株式を失う契約になっていたためです。本人はサインを拒否し、資産の8割に相当する株式放棄を覚悟しましたが、この一件が社内外で問題視され、最終的にOpenAI側が条項を撤回しています。
まとめ:陰謀論者ではなく「異端の予測専門家」
ダニエル・ココタジロ氏は、オカルト的な「預言者」というより、金融業界のアナリストがGDP成長率や株価を予測するのと同じ手法で、AIの進化を専門的に予測している人物です。
実際に約3億円を捨ててまで会社を批判する道を選んだ経緯や、予測を状況に応じてこまめに修正し続けている姿勢からも、単なる話題作りのための「AI悲観論者」ではないことがわかります。
とはいえ「人類滅亡70%」「2040年に超知能」といったキーワードだけが独り歩きすると、どうしても都市伝説的な文脈で消費されがちなのも事実。
次回は、そんな「都市伝説的に語られがちな部分」にあえてスポットを当てた読み物を、姉妹メディアのNOTEでお届けする予定です。


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