上げたのに、円が売られた。
2026年9月18日、日銀は政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げました。
1995年以来、31年ぶりの高さです。教科書どおりなら「金利が上がる国の通貨は買われる」。
つまり円高になるはずでした。
ところが発表直後、ドル円は156円台前半から157円台へ。円はむしろ売られました。
犯人は「反対2票」と、前の晩に動いたアメリカです。

ウサギ研究員は8月末の時点で
「FRBも日銀も9月に利上げする。でも金利差は変わらないから、円安の流れは止まらない」
と見立てていました。結果は、ほぼその通りの展開です。
この記事では、今回の決定と植田総裁の記者会見を噛み砕いたうえで、為替・金(GOLD)・株価のこの先、住宅ローンや家計への影響、そして「年内にもう一度利上げはあるのか」を独自の視点で予想します。
この記事の結論(3行)
① 日銀は7対2で1.25%へ利上げ。反対した2人は高市政権下で就任した「リフレ派」
② 前夜にFRBも利上げ。日米の金利差は縮まらず、円安は止まらない
③ 年内もう一度の利上げは12月が本命候補。カギは11月3日の米中間選挙
④ 沖縄の読者へ:利上げは軍用地の値段にも効き始めている(第7章)

1. 何が決まった? 30秒でわかる9月会合
まず用語をひとつだけ。政策金利とは、銀行同士が一晩だけお金を貸し借りするときの金利です。
いわば日本のお金の「基本料金」。
これが動くと、住宅ローン、預金、企業の借入れ……と、あらゆる金利が後からついてきます。
前回6月の利上げ(1.0%)からわずか3か月。
2024年3月にマイナス金利をやめて以降、日銀はおおむね「半年に1回」のペースで利上げしてきましたが、今回はそのペースを一段速めました。
日銀の説明はシンプルです。
中東情勢を背景にした原油高、円安による輸入品の値上がり、AI需要による半導体価格の上昇。
物価が「2%を超えて上振れするリスク」を早めに抑えたい、ということです。
しかも声明文には、利上げ後も「金融環境は緩和的なまま」「今後も政策金利を引き上げていく」と明記されました。つまり今回で打ち止めではない、という宣言です。
2. 反対2票の正体——「上げすぎ」ではなく「上げるな」
市場が一番反応したのは、利上げそのものではなく誰が、どちら向きに反対したかでした。
共通点:どちらも高市政権のもとで任命された「リフレ派」(金融緩和と積極財政を重視する考え方)
会社にたとえると、社長が選んだ新任取締役2人が、社長方針の議案にそろって反対票を投じた——そんな空気感です。市場はこれを「政権は利上げを歓迎していない」「次の利上げはそう簡単じゃない」と読み、円を売りました。
反対票の向きが、半年でひっくり返った
面白いのは、2026年の反対票の「向き」を並べたときです。
春は「遅すぎる」と背中を押され、秋は「速すぎる」と袖を引かれる。
植田総裁たち執行部は、前後から引っ張られる綱引きのど真ん中に立っています。
しかも7月には、4月に「もっと上げろ」と主張した委員の後任として、リフレ派の佐藤委員が加わりました。
9人の力学そのものが、じわじわ「ハト派」側に寄っている——これが今回の反対2票のいちばん大事な意味です。
3. 植田総裁の会見、押さえるべき3つの言葉
15時30分からの記者会見。
反対2票で「日銀、意外と弱腰?」という空気が漂う中、総裁の言葉はこうでした(報道ベースの要旨)。
市場の反応は正直でした。会見の最中、ドル円は157円台から156円50銭付近へ。
反対2票で「ハト派」に見えた分を、総裁が言葉で押し戻した格好です。
ウサギ研究員の読みはこうです。票では割れて見せ、口では締めて見せる。
政権に配慮しつつ、市場に「日銀はまだ本気」と伝える。
なかなか器用な二枚舌……いえ、高度なコミュニケーションでした。
※会見発言は当日の報道・速報に基づく要旨です。正式な会見要旨は後日、日本銀行のウェブサイトで公表されます。
4. 利上げしたのに円安? 犯人は前夜のFRB
日本時間9月17日の未明、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、約3年ぶりの利上げを全会一致で決めました。率いるのは、トランプ大統領が指名したウォーシュ議長。
しかも「年内にもう1回上げる」見通しまで示しています。
為替はシーソーです。日本の金利とアメリカの金利、どちらに「重り」が乗っているかで傾きが決まる。
両側に同じ重さの重りを同時に乗せたら——傾きは変わりません。
日本で円を持っていても1.25%。ドルに替えれば4%近く。
この差が残る限り、世界のお金は「円を借りてドルで運用する」方向に流れ続けます。
日銀が0.25%上げても、アメリカも0.25%上げたら、差し引きゼロ。
円安が止まらないのは、ある意味で当然なのです。
金利で止められない円安を、財務省の「実弾」が止めてきた
では2026年、円安の暴走は何が止めてきたのか。答えは日銀ではなく、財務省の為替介入です。
出典:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」。7/30分は7月30日〜8月26日の集計額。
7月30日の夜、ドル円はわずか50分ほどで約5円動きました。
日銀が0.25%上げるより、財務省が一晩で投じる「実弾」のほうが、はるかに相場を動かす。
これが2026年のリアルです。
内閣改造でも、「円安と戦う顔ぶれ」は変わらなかった
日銀会合の前日、9月17日には内閣改造もありました。
第2次高市改造内閣で10人が交代しましたが、介入を仕切ってきた片山さつき財務相は留任。木原官房長官や茂木外相も残り、政権の骨格はそのままです。
つまり「財務省が実弾で止め、日銀が金利で支える」という今年の円安対策の体制は、この先も続くということ。
一方で、沖縄にとって見逃せない人事もありました。
沖縄・北方担当は、国家公安委員長の兼務として葉梨康弘氏に交代。その4日前には、沖縄県知事選で古謝玄太氏が初当選しています。
利上げ・内閣改造・新知事——この3つが重なると、沖縄の土地の値段にどんな力がかかるのか。そのつながりは、noteの記事で一本の線にして解説しました。
2026年の介入の回数・金額・日付の詳細は、こちらの記事で時系列にまとめています。
5. この先の相場はどうなる? 為替・GOLD・株価の見立て
ここからは予想です。数字はウサギ研究員の見立てであり、将来を約束するものではありません。
「こういう力が働いている」という地図として使ってください。
円高要因 為替介入、米中間選挙後のリスクオフ、日銀の12月利上げ
160円を超えると「介入ゾーン」。上に行くほど財務省の実弾が怖くなり、上値は重くなる
要注意 急な円高が来ると「ドル建ての下落+円高」のダブルパンチ。1月29日に1gあたり3万円を超えた最高値から、いまは調整局面です
逆風 不動産・借入の多い企業、将来の成長を先取りして株価が高い銘柄
最大のリスクは「急な円高」。2024年8月の暴落も、円の急騰がきっかけでした
3つに共通するのは、主役がドル円だということ。金も株も、結局は円がどちらに振れるかで景色が変わります。
そしてドル円を大きく動かすのは、日銀よりも「FRB」と「財務省」と「アメリカの政治」です。
6. 私たちの暮らしはどう変わる?
相場を見ない人にも、利上げはじわじわ届きます。いちばん影響が大きいのは、変動金利の住宅ローンです。
適用金利が1.00% → 1.25%になった場合
そのほかの変化も、ざっくり整理しておきます。
- 預金:
普通預金や定期預金の金利も、後を追って上がる流れ。ただし物価の上昇には、まだ追いつきません。 - 物価:
利上げで値札がすぐ下がるわけではありません。
円安が続く限り、食品・ガソリン・電気など輸入に頼るものは高止まりしやすい。
車社会で物流コストの高い沖縄は、特にこの影響を受けやすい地域です。 - 給料:
日銀が利上げを続けられるかどうかは、来年の春闘(賃上げ交渉)次第。
賃金が物価に追いつくかが、家計にとっての本当の分かれ目です。
今のうちにやっておきたいのは、住宅ローンの明細で「変動か固定か」「いつ金利が見直されるか」を確認すること。
そして、預金を置いている銀行の金利を一度比べてみること。
どちらも10分でできて、知らないまま損をするのを防げます。
7. 【沖縄の読者へ】利上げで揺れ始めた「軍用地神話」
ここからは、沖縄に住む人、沖縄に土地を持つ人に向けた話です。
沖縄では昔から「軍用地は国債みたいなもの」と言われてきました。
借り手は日本政府。地料(賃料)は毎年ほぼ確実に入り、しかも少しずつ上がる。
銀行は喜んでお金を貸し、相続対策にも使われ、「いつかは軍用地を」と憧れる人も少なくありません。
ところが今年9月1日、本物の日本国債(10年物)の利回りが、一時3%に達しました。約30年ぶりの水準です。
一方で、普天間飛行場の軍用地を市場価格で買った場合の利回りは、ざっと2%台。
「沖縄の国債」が、本物の国債より利回りが低い。一世代ぶりに、この逆転が起きています。
そして日銀は、今回の会見で「今後も政策金利を引き上げていく」とはっきり言いました。
沖縄で長く信じられてきた軍用地の常識のうち、いくつかは、もう前提が変わり始めています。
沖縄でよく聞く「軍用地の常識」、いま本当にそう言える?
しかも、県と宜野湾市による普天間飛行場内の土地の買取は、今年度の申出締切が10月30日。
偶然にも、日銀が次の決定を発表する日とまったく同じです。
では、神話4の「逆転」は、どのくらいの土地で、いくら差がつくのか。
売るべき人、持ち続けるべき人は、何で分かれるのか。
そして新知事と内閣改造は、普天間の土地にどんな力をかけるのか。
その答えは、noteの記事「日銀利上げ、次に揺れるのは沖縄の軍用地だ。」に、具体的な手取りの試算つきでまとめました。
こんな人に読んでほしい
□ 普天間をはじめ、軍用地を持っている(相続予定がある)
□ 県や市から届いた「買取」の案内を、どうするか迷っている
□ いつか軍用地を買いたいと考えている
□ 軍用地ローンを組んでいる、組もうとしている
□ 新しい県政で、沖縄のお金の流れがどう変わるか知りたい
軍用地の売買は数千万円単位。仲介手数料だけで100万円を超えることも珍しくありません。記事1本の値段は、その手数料から見れば誤差のような金額です。判断の前に、まず「物差し」を手に入れてください。
8. 【独自予想】年内にもう一度、利上げはあるか?
年内に残る日銀の会合は、あと2回。その間に、アメリカの大イベントがはさまっています。
ウサギ研究員の結論から言います。10月はほぼない。12月は「条件付きでアリ」。その条件を決めるのが、11月3日の米中間選挙です。
10月会合が「ほぼない」理由
今回の利上げから6週間しか経っていないうえ、反対票が2つ出たばかり。
そして何より、米中間選挙のわずか5日前です。
結果がどちらに転んでも為替が大きく揺れかねないイベントの直前に、わざわざ動く中央銀行はまずありません。
総裁は「連続利上げも排除しない」と言いましたが、それは選択肢を残す言葉であって、予告ではないと見ています。
12月会合は、選挙の結果で2つに分かれる
12月会合は、選挙結果を見てから判断できる年内唯一の場。ここで、アメリカがどちらに転ぶかが効いてきます。
→ 積極財政と関税が続き、米金利は高止まり
→ ドル高・円安が再燃、160円台へ
→ 日銀は介入と合わせて12月利上げで応戦
→ 市場がリスクを嫌って円を買い戻す
→ 円高が急速に進む
→ 日銀は急ぐ理由が消え、2027年1月以降へ
ポイントは、日銀の利上げが「円安が進んだときの防波堤」として使われるという点です。
アメリカが強ければ円安が進み、日銀は上げざるを得なくなる。
アメリカが揺らげば円高になり、日銀は待てる。
皮肉なことに、日銀の次の一手を握っているのは、東京ではなくワシントンの有権者なのです。
シナリオBについては、当サイトの為替介入記事で書いてきた見立てとも重なります。
市場が自分から円を買い戻す局面が来たとき、政府がその流れに「追い討ち」をかける形で介入し、一気に円高へ押し込む——そんな展開になれば、日銀の出番はさらに後ろにずれます。
12月に動くなら、合図は3つ。①中間選挙後にドル円が158〜160円台へ戻る ②10月30日の展望レポートで物価見通しが上方修正される ③12月会合前に、総裁や副総裁の講演で「円安の物価への影響」への言及が増える。逆に、反対票が3つに増えるようなら、年内は見送りと読みます。
確度:中(ウサギ研究員の私見)
まとめ:日銀は動いた。でも円安を止める主役は、まだ日銀じゃない
- 日銀は7対2で1.25%へ利上げ。反対2人は高市政権下で任命されたリフレ派で、
日銀内の力学はハト派寄りに傾きつつある - 植田総裁は「局面は変化した」「連続利上げも排除しない」と、票の割れを言葉で打ち消しにいった
- 前夜のFRB利上げで日米金利差は縮まらず、円安の流れは続く。
止めてきたのは財務省の介入(2026年判明分で約27.1兆円) - 年内もう一度の利上げは12月が本命候補。
米中間選挙で共和党が踏みとどまれば可能性が高まり、民主党が躍進すれば2027年へずれる - 沖縄では、国債3%に対して普天間の軍用地は2%台。利上げは「軍用地神話」の前提も揺らし始めている(詳しくはnoteで)
31年ぶりの金利。数字だけ見れば歴史的です。
でも為替の世界では、日銀の0.25%はシーソーの片側に乗った小さな重りにすぎません。
次にシーソーを大きく傾けるのは、11月のワシントンか、深夜の財務省か。
ウサギ研究員は、引き続きその両方を見張ります。

よくある質問(FAQ)
- Q日銀の利上げで、住宅ローンの金利はいつから上がりますか?
- A
変動金利の住宅ローンは、多くの場合、銀行の「短期プライムレート」に連動して見直されます。
反映時期は銀行ごとに異なり、数か月後の返済分から適用されるのが一般的です。
借入3,000万円・残り35年で適用金利が0.25%上がると、毎月の返済は約3,500円増える計算です。
固定金利の場合、契約中の金利は変わりません。
- Q利上げしたのに、なぜ円安になったのですか?
- A
理由は2つです。
ひとつは、前日にアメリカのFRBも同じ幅で利上げしたため、日米の金利差が縮まらなかったこと。
もうひとつは、9人の政策委員のうち2人が利上げに反対し、市場が「次の利上げは簡単ではない」と受け止めたことです。
- Q利上げに反対した2人は誰ですか?
- A
浅田統一郎審議委員と佐藤綾野審議委員です。
浅田委員は「生鮮食品を除く物価がまだ2%に届いていない」、佐藤委員は「物価や景気が目立って加速していない」ことを理由に据え置きを主張しました。
どちらも高市政権のもとで任命された、金融緩和を重視するリフレ派とされています。
- Q2026年中に、日銀がもう一度利上げする可能性はありますか?
- A
年内に残る会合は10月29〜30日と12月17〜18日の2回です。
ウサギ研究員は、10月は米中間選挙(11月3日)の直前で見送りが濃厚、12月は選挙結果次第で可能性がある、と見ています。
共和党が踏みとどまって円安が再燃すれば12月利上げの確率が高まり、民主党が躍進して円高が進めば2027年以降にずれる、という見立てです。
- Q日銀の利上げは、金(ゴールド)の価格にどう影響しますか?
- A
国内の金価格は「ドル建ての金価格×ドル円」で決まります。
日銀の利上げで円高が進めば国内価格の押し下げ要因になり、アメリカの利上げはドル建ての金価格の重しになります。
現在は円安が国内価格を下支えしていますが、急な円高が来ると下落が大きくなりやすい点には注意が必要です。
- Q日銀の利上げは、沖縄の軍用地の価格に影響しますか?
- A
影響する可能性があります。
軍用地の価格は「年間地料×倍率」で決まり、倍率は市場の需要で動きます。
国債などほかの資産の利回りが上がると、利回り2%台の軍用地の相対的な魅力は下がり、倍率に下向きの力がかかりやすくなります。
普天間飛行場の土地買取や新知事の影響も含めた詳しい分析は、noteの記事で解説しています。
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※本記事は2026年9月18日時点の公表情報・報道をもとに作成しています。相場の見立てや確率は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。
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