日本でまだ知られていない、FIFA会長のこと。――インファンティーノとトランプ「蜜月」の疑惑を追う

FIFAワールドカップ2026、権力とマネーが交錯する汚職構造を象徴するイラスト(金塊・暗号資産・赤card・監視カメラ)
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FIFAワールドカップ2026、盛り上がっていますね。私も普通に楽しんでいます。大会そのものにケチをつけるつもりは一切ありません。

ただ、その舞台の”上”で何が起きているかは、たぶん日本ではまだあまり知られていません。
今大会の開幕直後から、ある人物の名前が海外メディアの見出しを賑わせ続けています。
FIFA会長、ジャンニ・インファンティーノ
今日はこの人について、知っておいたほうがいい話をします。

この記事でわかること

  • 一発退場のはずが1年執行猶予に。60年ぶりに覆された処分の裏側
  • 誰も知らなかった「FIFA平和賞」が、なぜトランプ氏に贈られたのか
  • 「私も移民労働者だ」と言った会長と、入国拒否されたソマリア人主審の話
  • 3万ドル超のチケット価格と、会長の報酬が3割増えた理由
  • 中東マネー、暗号資産、監視テック――ここでは書ききれなかった話(続きはNOTEで)

※本記事は各国の報道機関による公開情報をもとにした独自分析です。特定個人・団体を誹謗中傷する意図はなく、断定的な事実認定を行うものではありません。

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一発退場が、なぜか「なかったこと」になった

事の発端は7月5日。開催国アメリカ代表FWフォラリン・バログン選手が一発退場となり、通常なら次戦は出場停止のはずでした。
ところが、その処分がなぜか「1年間の執行猶予」という異例の裁定に差し替えられ、バログン選手はベルギー戦にそのまま出場することになります。

退場処分を受けた選手が、W杯の場でそのまま出場を許されるのは1962年以来はじめてのことだそうです。
60年以上ルールが破られなかった前例を、今大会でいきなり更新してしまったわけです。

海外の複数メディアが報じているのは、トランプ大統領がこの処分についてインファンティーノ会長に直接電話をかけ、「みんなこの判定はおかしいと言っている」と伝えたという経緯です。
そして数日後、処分は覆りました。偶然かもしれません。
ただ、この会長とトランプ氏の関係を少し調べると、「偶然」で片付けるにはあまりに材料が揃いすぎています。

レッドカードと謎のトロフィーの画像。FIFAワールドカップアメリカ代表の疑惑のレッドカードを示唆。

「FIFA平和賞」という、誰も知らなかった賞

2025年12月、ワシントンD.C.で開催されたW杯組み合わせ抽選会。
ここでインファンティーノ会長は、突如として「FIFA Peace Prize(FIFA平和賞)」なる、これまで存在しなかった賞を創設し、その場でトランプ大統領に授与しました。

選考基準は公表されず、独立した審査員がいたのかも不明。
授賞式の会場となったケネディ・センターは、その数ヶ月前にトランプ氏自らが理事会を再編し理事長に就任した施設です。
つまり、賞をあげる会場そのものを、賞をもらう本人が支配しているという状態でした。

フランスの調査報道メディアの取材によれば、FIFA評議会(37名)のメンバーですら、この賞の創設について事前に知らされていなかったといいます。
匿名の評議会メンバーの証言として「誰も何も知らなかった。
誰が受賞者を選んだのかも分からない」という趣旨のコメントも報じられました。
組織のトップが、組織の意思決定プロセスを完全にすっ飛ばして「賞」を私物化してトランプ氏に贈った——そう見えても仕方のない状況です。

この一件、すでに欧州議会議員50名(13カ国選出)が連名で調査要求の書簡をFIFAに送付し、英国の人権NGOは正式な倫理委員会への申し立てを行っています。ノルウェーサッカー協会も同様の書簡を送りました。
一部のメディアはこれを「サッカー界トップの不統治に対する、欧州の政策担当者による最も重大な介入」とまで表現しています。

ちなみにこの会長、トランプ氏の中東歴訪(サウジ・カタール)に同行した際、専用機の到着が遅れたという理由でFIFA総会の開会を3時間以上遅延させたこともあります。UEFA代表団はこれに抗議して壇上を退席しました。
サッカーの統括団体のトップが、サッカーの会議よりも政治家とのスケジュールを優先する——これが今、実際に起きていることです。

実は、FIFA会長が「クリーン」だった時代なんてあったか?

ここで余談を挟みますが、「そういえば先代の会長も汚職まみれだった気が…」と思った方、記憶は正しいです。

インファンティーノ氏の前任、ゼップ・ブラッター元会長は2015年、FIFA自身の倫理委員会によって活動禁止処分を受けています。
さらにその前任、ジョアン・アヴェランジェ氏に至っては、スイスの裁判記録で長年にわたる巨額の賄賂受領が明らかになり、名誉会長職を辞任する事態になりました。
歴代3代続けて、何かしらの「黒い話」がついて回っているのがFIFAという組織です。

余談ついでに、Netflixで配信中の映画『メヒコ 1986』を観た方はいますか?
1986年W杯の開催国をメキシコが土壇場でかっさらう舞台裏を描いた実話ベースの作品で、主人公は「コネも権力もない男」がハッタリと話術だけでFIFA幹部を丸め込んでいく——というブラックコメディです。
笑って観られる内容ですが、裏を返せば「FIFAの開催地決定なんてハッタリで動く」ことを大手配信サービスが堂々とエンタメ化できるほど、この組織の意思決定プロセスは”そういうもの”だと世間から思われている、ということでもあります。

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お金の匂いも、しっかりする

インファンティーノ会長の2025年の報酬パッケージは、基本給と業績連動ボーナスを合わせて約600万ドル。
前年から3割以上増えています。
増えた理由は、2025年に拡大開催されたクラブW杯(開催資金の多くを中東マネーが支えたとされる大会です)がFIFAの収益を押し上げたためだと報じられています。

2026年大会の予想収益は89億ドル。
決勝戦のチケットはダイナミックプライシングにより、当初想定の3倍以上、3万ドルを超える価格まで高騰しました。
ファンからの批判に対し、会長は「Chill and relax(落ち着けって)」と一蹴したそうです。
ちなみにこの「Chill and relax」という言葉、後述する別の批判に対しても、まったく同じフレーズで返答しています。
よほどお気に入りの決め台詞なのかもしれません。

W杯というビジネスにどれだけのお金が動き、それが誰の懐に流れていくのか——という切り口では、各国代表監督の報酬とその費用対効果を試算した記事も書いています。合わせてどうぞ。

→ 各国代表監督の報酬、費用対効果を試算してみた

「私も移民労働者だ」と言った男の、その後

2022年11月、カタール大会の開幕直前、インファンティーノ会長は記者会見でこう述べました。

「今日、自分はカタール人であり、アラブ人であり、アフリカ人であり、ゲイであり、障害者であり、そして移民労働者でもあると感じている。」

西側からの人権批判をかわすための発言でしたが、この”連帯表明”は世界的に大きな話題になりました。

その4年後の今大会、アフリカ年間最優秀主審に選ばれ、W杯史上初のソマリア出身主審になるはずだった審判が、開催国の空港で入国を拒否されるという出来事がありました。11時間拘束された末、そのまま送還されています。
この件についてインファンティーノ会長は「Chill and relax」——先ほどのチケット価格批判と、まったく同じ返し方でした。
FIFAの公式見解も「入国審査プロセスには関与していない」というものです。

そしてこれは審判だけの話ではありませんでした。
イラン代表は今大会、米国との外交・軍事的な緊張を背景に、試合の24時間前以降にしか入国できず、試合当日中に出国しなければならないという異例の制限を課されています。
拠点も米国内に置けず、共催国メキシコから毎回移動する形です。
ガレノエイ監督は「大会で最も不当な扱いを受けているチーム」だと語り、この移動制限がニュージーランド戦の2-2という結果に響いたとも指摘しています。
イランサッカー連盟のスタッフに至っては15人がビザを拒否され、再申請後も11人が入国できないままでした。

米国土安全保障省はこれを「イラン側とも合意した安全上の予防措置」と説明していますが、イラン大使館側は「意図的かつ差別的な扱いを最高レベルにまでエスカレートさせたものだ」とFIFAに責任追及を求めています。
どちらの言い分が正しいかはさておき、W杯開幕前からイラン連盟はFIFAに正式抗議し、事態の是正を求めていました。
これに対しインファンティーノ会長が返した言葉は、審判の一件と同じ「FIFAは各国政府を支配できる世界の王ではない」というものです。

「私も移民労働者だ」と言った本人が率いる組織が、自国の移民・入国政策で実害を受けた当事者——審判であれ、一国の代表チームそのものであれ——に対しては「関与していない」「支配できない」と繰り返し一線を引く。
この落差を、単なる皮肉として消費するだけでいいのかどうか——という話です。

中東マネーとの、ちょっと不思議な距離感

会長はここ数年、カタールに長期滞在し子どもたちも現地の学校に通わせ、移動には同国提供の航空機を使うことが知られています。
そして2034年W杯の開催地がサウジアラビアに決まる2週間前、会長は自身のSNSで先んじて開催地決定を”予告”していました。その直後、サウジ国営石油会社アラムコがFIFAの最上位スポンサー契約(推定で年間1億ドル規模)を結んでいます。

タイミングの一致だけを見れば「そういうこともあるだろう」で済む話です。
ただ、これが金額・契約構造・関係者の証言まで含めて並べていくと、かなり違う輪郭が見えてきます。この部分は、今回はあえて詳しく書きません。

暗号資産、監視技術、そしてシリコンバレーの気配

会長は昨年、ホワイトハウス主催の「暗号資産サミット」に登壇し「FIFAコイン」構想を発表しています。
今年に入ってからは、トランプ一族の暗号資産事業が主催するイベントにまで顔を出し、この構想を蒸し返しました。
さらに今大会の警備インフラには、シリコンバレーのある“あの企業”の出身者が立ち上げた会社が深く関わっていることも分かっています。

サッカーの世界統括団体が、なぜここまで暗号資産・監視テック界隈と接点を持つのか。
誰の名前がどう絡んでいるのか——このあたりは、正直かなり面白い話になっているので、また別の機会に。

華やかな演出といえば、決勝戦のハーフタイムショーの舞台裏についても以前書きました。
あの煌びやかな数分間の裏にどれだけのお金と利権が動いているか気になる方はこちらもどうぞ。

→ W杯決勝ハーフタイムショーの舞台裏

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よくある質問

Q. なぜバログン選手の退場処分は取り消されたのですか?

公式には「FIFA規律規程に基づく再審査の結果」とされていますが、複数の海外メディアはトランプ大統領がインファンティーノ会長に直接連絡し、処分の見直しを求めたと報じています。退場処分を受けた選手がW杯でそのまま出場を認められたのは1962年以来はじめてのことです。

Q. FIFA平和賞とは何ですか?

2025年12月、W杯組み合わせ抽選会の場でインファンティーノ会長が創設した新しい賞で、初代受賞者はトランプ大統領でした。選考基準や審査員は公表されておらず、FIFA評議会メンバーの多くが創設を事前に知らされていなかったと報じられています。

Q. インファンティーノ会長とトランプ大統領はどういう関係ですか?

2025年の就任以降、公式行事への同席や中東歴訪への同行、FIFA平和賞の授与など、両者の距離の近さを示す出来事が積み重なっています。FIFA総会がトランプ氏との中東歴訪を理由に3時間以上遅延し、UEFA代表団が抗議して退席した一件もありました。

Q. FIFA会長の汚職疑惑は今回が初めてですか?

いいえ。前任のゼップ・ブラッター元会長は2015年にFIFA倫理委員会から活動禁止処分を受けており、その前任のジョアン・アヴェランジェ氏もスイスの裁判記録で長年の賄賂受領が明らかになっています。歴代3代にわたり何らかの疑惑がついて回っているのが実情です。

本記事について

本記事で言及した出来事・報道内容は、Reuters、AP、Guardian、CNN、AFPなど各国主要メディアの公開報道に基づいています。因果関係やタイミングの一致について指摘した箇所は、公開されている事実関係から導かれるうさぎ技研の分析・見解であり、特定の個人・団体による違法行為や不正行為を断定するものではありません。関係者・関係団体を誹謗中傷する意図は一切なく、事実と異なる点や誤りがあった場合は訂正・削除に応じます。

ここまで読んで、こう思いませんでしたか。

「思想も信条も一貫していない。あるのは”関係資本”の蓄積だけじゃないか」と。

カタールにもサウジにもトランプにも、そして小国レバノンにまで——政治的立場に関係なく、金と権力とアクセスがあるところに、この会長は吸い寄せられていきます。この記事で”あえて書かなかった”中東マネーの契約構造、テック業界との人脈図、そして「なぜイスラエルに対してだけはFIFAが妙に及び腰なのか」という、思想の一貫性のなさを裏付ける決定的な材料——これらは有料版でまとめて回収します。

続きはNOTEにて。(近日公開)

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