7/9リリース?!GPT-5.6も政府に足止め、Grok 4.5は”自己採点”でOpus超え——それでもAnthropicだけ「いじめられ役」に見える理由

イーロン・マスクによるGrok 4.5勝利宣言と、政府の規制により公開延期となったOpenAI GPT-5.6、Anthropicの対立を描いた海外雑誌風の風刺画アイキャッチ画像
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6月28日、イーロン・マスク氏がXにこう投稿した。

「Grok 4.5、Opusに迫る、いや超えるかもしれない」

採点者は誰かというと、SpaceXとTeslaの社員——つまりマスク氏の部下である。
自分で問題を作り、自分で解いて、自分で花丸をつける。
夏休みの自由研究ならほほえましいが、これは時価総額数千億ドル企業の公式発表だ。
しかもその裏で、今週の”本命”だったはずのOpenAIの新型モデルは、誰も予想しなかった理由でリリースが止まっていた。
政府である。そして政府が止めた相手は、OpenAIだけではなかった。

📌 この記事のポイント

  • Grok 4.5はSpaceX・Tesla内部限定の非公開ベータ。「Opus超え」は身内による自己評価で、第三者ベンチマークは一切ない
  • 今週の主役のはずのOpenAI「GPT-5.6」も、Anthropicと同じ枠組みの大統領令で政府の事前審査待ちになっている
  • AnthropicのClaude Fable 5・Mythos 5は6月、世界規模で約2週間アクセス不能に。背景にはペンタゴンとの別の対立も続いている
  • Palantirのアレックス・カープ氏、OpenAIの巨額赤字リーク、Oracleの警告——「儲けた側」からのAIバブル懸念が一斉に噴出
  • ピーター・ティール氏がローマ教皇レオ14世を「中国共産党の手先」と呼び、新たな喧嘩を購入
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Grok 4.5「Opus超え」——採点者は身内です

マスク氏の投稿によれば、Grok 4.5は1.5兆パラメータの新基盤モデル「V9」をベースに、買収したばかりのコーディングツール「Cursor」のデータを追加学習させたものだという。
ちなみにこのCursor買収、報道ベースでは600億ドル規模とされる。
Cursorには「Privacy Mode」というオプトアウト機能があり、これを無効にしていたユーザーのコードは学習に使われうる、と公式に説明されている。
つまり、普段Cursorで黙々とコードを書いていた開発者の何人かは、知らないうちにイーロン・マスクの次期AIモデルの”先生”にされていた可能性がある。人材募集要項に載っていない仕事だ。

肝心の性能評価は「SpaceXとTeslaの社員による内部テストでOpus級、もしかしたら超えるかも」という一文のみ。
LMArenaのような第三者ベンチマークも、外部レビューも存在しない。
おまけに同社は今回、xAIを”SpaceXAI”というブランドに統合したと発表しており、ロケット会社が自動運転車会社と組んでチャットボットの採点をしている構図は、正直かなりシュールだ。

マスク氏は「今年は毎月、完全にゼロから学習した新モデルをSpaceXが出す」とも豪語しているが、その”完全にゼロから”にどこまでの意味があるのか、Grok 4.3(0.5兆パラメータ、今年12月学習完了)からわずか半年での主張だけに、割り引いて聞いておきたい。

本命のはずのGPT-5.6、まさかの「政府の順番待ち」

今回のAI界隈で本来の主役だったのは、6月26日にOpenAIが発表した次世代モデル群「GPT-5.6」だ。フラッグシップの「Sol」、コスパ型の「Terra」、高速廉価の「Luna」という3階層構成で、命名体系まで刷新した気合の入ったリリース——のはずだった。
ところが、ChatGPTユーザーはいまだに指一本触れられない。
米政府が事前承認した約20の”信頼できるパートナー”だけが、APIとCodex経由でアクセスできる限定プレビュー状態が、発表から2週間以上経った本稿執筆時点でも続いている。

理由はトランプ大統領が7月2日に署名した大統領令だ。
最新AIモデルを一般公開する前に、政府のサイバーセキュリティー審査へ自主的に提出するよう求める内容で、OpenAIはこれに従って「一般提供は数週間以内」としながらも、サム・アルトマンCEO自らXで「広範な安全性テストは悪い考えではない。
ただ、政府が顧客を選ぶという発想は気に入らない」と、やんわり不満を漏らしている。
数週間のはずが8月にずれ込むとの観測も出ており、当分ChatGPT側では待ちぼうけが続きそうだ。

この「政府がまず承認した相手にだけ配る」というやり方、どこかで聞いた話だと思わないだろうか。
そう、6月にAnthropicが味わったのと、ほぼ同じ構図である。

2026年7月のAI業界を象徴するイラスト。イーロン・マスク、OpenAI、Anthropic、ローマ教皇が対立する構図と「AI: WAR WITHOUT WINNERS」の文字。
AI業界は規制よりも先に「誰が一番大人げないか」を競っているように見える。
7月の業界を揺るがす対立構図。

そもそもAnthropicは、どれだけ「いじめられて」きたのか

時系列を整理しておきたい。
発端は2月末、ペンタゴン(現・国防総省改め「戦争省」)がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定したことだった。
この指定は本来、中国やロシア系の外国敵対企業に使われてきたもので、米国企業への適用は史上初。
理由は、AmodeiCEOが「完全自律型兵器」と「国内の大規模監視」へのClaude利用を拒んだことへの意趣返しだったとされる。
トランプ大統領はTruth Socialで「我々が国の運命を決める、暴走した左派AI企業になんて決めさせない」と投稿し、全連邦機関にAnthropic排除を指示した。
その数時間後には早くもOpenAIが独自に国防総省と契約を締結——のちに自社でも「雑で日和見的だった」と認めて再交渉する羽目になったが、動きの速さだけは際立っていた。

3月末、連邦地裁のリタ・リン判事はAnthropic側の訴えを認め、「合意しない意見を表明しただけの米国企業を潜在的な敵性工作員呼ばわりするのは、統治法のどこにも根拠がない」「これは典型的な言論の自由への報復だ」と踏み込んだ判決文を書いた。
ところが4月8日、今度は控訴裁判所が正反対の判断を下し、国防総省との直接契約についてはAnthropic排除が継続することに。
同じ日に地裁の差し止めは有効なまま——という前代未聞のねじれ状態が、実は現在進行形で続いている。

さらに6月12日、今度は商務省が輸出管理を根拠に、公開したばかりのClaude Fable 5・Mythos 5への「外国籍者アクセス」停止を命令。
Amazon側の研究者が発見したジェイルブレイク手法がきっかけとされる。
Anthropicは国籍をリアルタイムで判別できないため、結局は全世界・全顧客への提供を止めるしかなかった。
約2週間の完全停止を経て、6月26日にMythos 5だけが承認済み100社超に限定復旧——奇しくもこれは、GPT-5.6が同じ大統領令の網にかかった、まさにその同じ日の出来事である。
Fable 5の全面復旧は7月1日にずれ込んだ。

皮肉なのは、Anthropicが以前から「危険なAIモデルを政府が止められる権限」の必要性を自ら訴えてきた企業だということだ。
その理屈が、まさか真っ先に自社の旗艦モデルに向けられるとは、本人たちも思っていなかっただろう。
この一連の騒動、単なる安全審査の巡り合わせなのか、それとも特定企業への選択的な圧力なのか——その判断材料になりそうな社内メモの話は、後半のNOTEで詳しく書く。

儲けてきた側が、急に「バブルだ」と言い出した件

規制の話だけでなく、おサイフの話でも今週は騒がしかった。
Palantirのアレックス・カープCEOは7月1日、CNBCの生放送で「トークン課金のビジネスモデルは正気の沙汰ではない」と言い切った。
リークされ英フィナンシャル・タイムズが裏取りした監査資料によれば、OpenAIは2025年に約130億ドルの売上に対し約209億ドルの営業損失——1ドル稼ぐのに1.6ドル使っていた計算になる。
Oracleも証券当局への提出書類で、OpenAI向けデータセンター建設が「顧客の支払い不履行によって瓦解しかねない」と自ら警告した。

ただし、これを手放しで「それみたことか」と拍手するのはフェアではない。
カープ氏の発言は自社が売る”主権レイヤー”型のビジネスにとって都合のいい話でもあるし、Anthropic自身も4月にFigmaと競合する「Claude Design」を投入した直後、自社の最高製品責任者がFigma取締役をわずか3日前に辞任していたことが判明し、Figma株が当日7%下落する一幕もあった。
儲けてきた側からバブル警報が鳴り始めたのは事実だが、警報を鳴らしている当人たちの手も、そこまできれいというわけではない。

よくある質問

Q. Grok 4.5とは?もう使えますか?

A. xAI(現SpaceXAI)が開発中の新モデルで、1.5兆パラメータの基盤モデル「V9」がベース。2026年6月28日時点でSpaceXとTesla社内限定の非公開ベータ段階にあり、一般提供やAPI公開の時期は未発表です。「Opus級、あるいはそれ以上」という評価はマスク氏本人の投稿によるもので、第三者機関によるベンチマーク結果は存在しません。

Q. GPT-5.6 Sol・Terra・Lunaはいつ使えるようになりますか?

A. 2026年6月26日に限定プレビューとして発表されましたが、米政府が承認した約20のパートナー組織のみがAPI・Codex経由で利用でき、ChatGPTでは本稿執筆時点(7月上旬)でも使えません。OpenAIは「数週間以内」の一般提供を予定していますが、確定日は未発表で、8月にずれ込む可能性も指摘されています。

Q. なぜClaude Fable 5・Mythos 5は輸出規制を受けたのですか?

A. 2026年6月12日、Amazon側の研究者が発見したとされるジェイルブレイク手法を受け、米商務省が国家安全保障を理由に外国籍者へのアクセス停止を命令しました。国籍をリアルタイム判別できないAnthropicは全世界・全顧客への提供を停止。Mythos 5は6月26日に承認済み企業向けに、Fable 5は7月1日に復旧しました。

Q. AnthropicとPentagon(米国防総省)の対立は今どうなっていますか?

A. 2026年2月末、国防総省がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し、トランプ大統領も全連邦機関に利用停止を指示しました。3月に地裁がこの指定を違法とする差し止めを認めた一方、4月に控訴裁は国防総省との直接契約の除外を維持する判断を下し、判断が分かれたまま訴訟は継続中です。

Q. ピーター・ティールはローマ教皇と何を争っているのですか?

A. 教皇レオ14世が2026年5月の回勅でAI規制の必要性を訴えたことに対し、ティール氏は7月2日のアスペン・アイデアズ・フェスティバルで「教皇は意図せず中国共産党のために働いている」と発言しました。両者の対立は3月にティール氏がバチカン近郊で開いた非公開講演会にまで遡ります。

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そしてティールは、よりによって教皇に喧嘩を売った

規制やおサイフの話に疲れた方に、今週いちばん愉快なニュースを。
7月2日、アスペン・アイデアズ・フェスティバルに登壇したピーター・ティール氏が、ローマ教皇レオ14世を「意図せず中国共産党のために働いている」と評した。
会場は笑いに包まれたそうだが、笑っていいのはこちら側だけにしてほしい。

発端は教皇が5月に出した回勅「マニフィカ・フマニタス」。
AIによる大量自動化を現代版バベルの塔になぞらえ、自律型兵器が「戦争への心理的なハードルを下げる」と明確に非難した内容だ。
ティール氏に言わせれば、この手のAI規制論はアメリカだけを鈍らせ、中国を利するだけらしい。

そもそもティール氏と教皇庁の因縁は今年3月、バチカンのお膝元ローマで「反キリスト」をテーマにした非公開講演会を開いた頃から続いている。
今回はさらに一歩踏み込み、史上初のアメリカ人教皇を名指しで攻撃した格好だ。
奇しくもレオ14世は、トランプ政権のイラン開戦にも世界でもっとも厳しい批判を投げかけてきた人物でもある。
トランプ氏本人もSNSで教皇を「犯罪に弱腰」と罵り、「自分がホワイトハウスにいなければ教皇は今頃バチカンにいられなかった」という、根拠不明の持論まで展開している始末だ。

言っておくが、反キリストがどうという話は、身内限定の秘密結社「ダイヤログ」の中だけでやってほしかった——と思うのは筆者だけだろうか(ダイヤログについてはこちらの記事で詳しく書いた)。
教皇を挑発する余裕があるなら、その情熱をPalantirの決算説明にでも向けてもらいたいものである。

自己採点で勝利宣言するAI、政府の順番待ちをするAI、そして身内だけのはずの終末論を教皇にぶつける投資家。
2026年7月のAI業界は、規制よりも先に「誰が一番大人げないか」を競っているように見える。
この構造が偶然の産物なのか、それとも特定企業を狙い撃ちにする意図的な設計なのか——Amodei氏がOpenAI幹部を痛烈に批判した社内メモの中身と、あわせて見るべきもう一つの資本の動きについては、NOTEの有料版で書く。

ウサギ研究員&I#x1f407;の本音はここから

なぜAnthropicだけが狙い撃ちにされ続けるのか。Amodeiの社内メモが暴露した本当の対立構造を、NOTEで公開中。

媚びない。魂は売らない。本質だけを書く。——続きはNOTE限定です。

NOTEで後半を読む →

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